客単価を上げたい、と相談を受けたとき、多くの院がまず考えるのが値上げです。しかし値上げをせずに客単価が上がる院と、値上げをしても上がらない院があります。違いは価格ではなく、選択肢の出し方にあります。このページでは、メニューの見せ方から客単価を整理します。
この記事でわかること
- 客単価が「価格」ではなく「選ばれ方」で決まる理由
- メニューが1つの院が、値下げ競争に巻き込まれる仕組み
- 初回と2回目以降を分けるべき理由
- 提示するタイミングが、施術後では遅い理由
- 景品表示法で問題になりやすい価格の書き方
目次
1 結論:客単価は、選択肢の設計で動きます
客単価は、次の形で決まります。
客単価 = 提示した選択肢 × 選ばれた割合
値上げは左側だけを動かす操作です。右側を無視して左だけ動かすと、単価は上がっても人数が減り、売上は変わりません。
先に動かすのは右側です。選択肢の出し方を変えるだけで、値上げをせずに客単価が動きます。
これは治療院の経営で整理した「売上=患者数 × 平均来院回数 × 客単価」の、3つ目を扱う話です。手を付ける順番としては、再来率の次に来ます。
2 メニューが1つだと、比べる相手が他院になります
ここが最も見落とされている点です。
| メニューの数 | 患者さんが比べる相手 | 起きること |
|---|---|---|
| 1つだけ | 他院の価格 | 「あそこは4,000円だった」と言われる |
| 3つある | 院内の3つ | 「どれにしようか」という検討になる |
選択肢が1つしかないとき、患者さんの判断は「ここにするか、しないか」の二択になります。そのとき比較の材料になるのは、他院の価格しかありません。
選択肢が3つあると、判断が「どれにするか」に変わります。この時点で、他院との比較から一歩離れています。
これは値上げではありません。同じ施術内容でも、出し方を変えるだけで検討の土俵が変わるという話です。
3 選択肢を3つにすると、何が変わるか
3つに分けるとき、時間と内容で分けるのが最も自然です。
| 内容 | 時間 | 想定される選ばれ方 | |
|---|---|---|---|
| 短時間 | 気になる部位を中心に | 約20分 | 時間が取れない方 |
| 標準 | 全身の確認を含む | 約40分 | ここが中心になります |
| 長時間 | 標準+動作の確認と説明 | 約60分 | じっくり相談したい方 |
3つを作るときの注意
- 真ん中を、いちばん選んでほしい内容にする(両端は比較の材料です)
- 価格差は、時間差に対応させる(内容の優劣ではなく、量の違いとして説明できる形にします)
- いちばん安いものを、極端に安くしない(そこに集中すると、客単価は下がります)
3つより多くすると、選べなくなります。増やすほど良いわけではありません。
4 初回と2回目以降は、分けて設計します
初回と2回目以降では、患者さんが払っている対価が違います。
- 初回に払っているのは「試す費用」
効くかどうか分からない状態で払います。ここが高いと、そもそも来ません
- 2回目以降に払っているのは「続ける費用」
一度受けたうえで判断しています。初回より高くても、説明があれば通ります
多くの院が、この2つを同じ価格にしています。その結果、初回のハードルが高く、2回目以降が安すぎるという状態になります。
初回は入りやすく、2回目以降は内容に見合った額に。これが基本形です。ただし初回を極端に下げると、価格で選ぶ層だけが集まります。整体院の経営で扱った値下げの問題と同じ構造です。
5 提示するタイミング
施術が終わってからでは遅い、というのが実務上の結論です。
| タイミング | 患者さんの状態 | 結果 |
|---|---|---|
| 会計時に提示 | 帰る準備ができている | その場で断りづらく、次回は来にくくなる |
| 施術後に提示 | 体感は変わったが、頭は整理されていない | 返事を保留されやすい |
| 施術前に提示 | これから何をするかを聞いている | 選ぶ行為として成立する |
施術前に「今日はこの3つのどれで進めますか」と聞くと、それは説明であって、売り込みではありません。同じ内容でも、会計時に出すと売り込みになります。
この違いは、口コミの依頼のタイミングと同じ構造です。
6 価格の書き方で、法令に触れる部分
価格の表示は、景品表示法が直接かかります。特に注意が必要なのは次の2つです。
| 問題になりやすい書き方 | 何が問題か |
|---|---|
| 「通常8,000円 → 初回2,980円」 | 通常価格での販売実績が乏しい場合、二重価格表示として問題になります |
| 「今月限定」を毎月続ける | 期間限定でない条件を限定と表示することになります |
| 税抜だけを大きく表示 | 総額表示の義務があります |
| 「〇回で改善」などの回数と効果の結び付け | 効果の断定にあたります |
個別の判断は、専門家・行政にご確認ください
価格表示の適否は、実際の販売実績や表示の文脈によって判断されます。また、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律および柔道整復師法により、施術所の広告可能事項は限定されています。本記事は一般的な整理であり、適法性を判断・保証するものではありません。個別の表現については、所轄の行政機関または弁護士等の専門家にご確認ください。
安全で、かつ効く書き方は決まっています。割引や効果ではなく、何をするか・何分かかるか・いくらかを並べることです。この3つは事実なので、書いても問題になりません。
7 やってはいけないこと
- その場で回数券を決めさせる
施術直後の高揚した状態での高額契約は、後の消費者トラブルにつながりやすい場面です。持ち帰って判断できる形にします
- 既存の患者さんに、予告なく新価格を適用する
新規から新価格、既存は据え置きか段階的に。混乱が小さく済みます
- メニューを5つ以上に増やす
選択肢が多いと、決められずに「また今度」になります
- 安いメニューを目立たせる
選ばれた結果、客単価は下がります。真ん中が中心になる配置にします
8 効果は、この数字で見ます
客単価そのものより先に、内訳を見ます。
毎月数える3つ
- メニュー別の選ばれた件数(真ん中に集まっているか)
- 客単価(売上 ÷ 延べ来院数)
- 再来率(単価を上げた月に下がっていないか)
客単価が上がっても再来率が下がっていれば、差し引きでマイナスです。必ず2つ並べて見ます。
接骨院の場合は、これに自費比率が加わります。保険部分の単価は院が決められないため、動かせるのは構成比だけだからです。詳しくは接骨院の経営と自費メニューの作り方にあります。
数字を取る仕組みはGA4の3指標から始めるのが早いです。
9 何から着手するか
- いまのメニューを紙に書き出す
いくつあるか、価格差がどう説明できるか。1つしかなければ、そこが原因です
- 3つに分ける
時間で分けるのが最も説明しやすい形です。真ん中を中心に置きます
- 初回と2回目以降を分ける
初回は入りやすく、2回目以降は内容に見合った額に
- 提示を施術前に移す
運用を変えるだけで、費用はかかりません
- サイトに明記する
来院前に分かる状態にします。治療院のマーケティング
- 既存の表示を点検する
二重価格・期間限定・税抜表示。景表法の観点でまとめて確認します
10 よくあるご質問
メニューを3つにすると、安いほうばかり選ばれませんか。
配置と説明で変わります。いちばん安いものを極端に安くしないこと、そして真ん中を最初に説明すること。この2つで、真ん中に集まりやすくなります。1か月試して、内訳を数えてから調整してください。
鍼灸院ですが、施術内容が1種類しかありません。
内容ではなく時間で分けられます。20分・40分・60分のように。鍼灸院は検討期間が長く、価格以外で選ばれやすい業態なので、時間の選択肢を出すだけでも単価が動きます。
値上げの説明が苦手です。何と言えばよいですか。
値上げの説明をしようとするから難しくなります。説明するのは価格ではなく、内容です。「今日は40分で、全身の確認を含みます」と伝えれば、価格は内容の結果として受け取られます。新メニューとして出せば、値上げの説明そのものが不要になります。
予約時にメニューを選んでもらうことはできますか。
できます。むしろそのほうが、院内での説明が要りません。WEB予約に3つの選択肢を並べる形です。選択肢の出し方は予約システムの選び方で扱っています。
11 まとめ
- 客単価は、値上げではなく選択肢で動きます
提示した選択肢 × 選ばれた割合。先に動かすのは右側です
- メニューが1つだと、比べる相手が他院になります
3つにすると、検討が院内で完結します
- 初回と2回目以降は、払っている対価が違います
同じ価格にする理由がありません
- 提示は施術前に。会計時では売り込みになります
運用を変えるだけで、費用はかかりません
- 客単価と再来率は、必ず並べて見ます
片方だけ見ると、判断を誤ります
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の経営判断や法令適合性を保証するものではありません。
※価格表示の適否、広告可能事項の範囲については、所轄の行政機関または弁護士等の専門家にご確認ください。
※記載の時間・価格の区分は説明のための例であり、特定の料金体系を推奨するものではありません。

