接骨院・整骨院の経営|収入が二階建てである、という前提から考える

治療院マーケティング

接骨院・整骨院の経営が難しいのは、施術が難しいからではありません。収入が二階建てになっていて、そのうち伸ばせるのは片方だけという構造にあります。この構造を理解しないまま「新患を増やす」「単価を上げる」と手を打つと、忙しさだけが増えて手残りが変わりません。このページでは、接骨院の経営を数字の構造から整理し、どの順番で手を入れるかをまとめます。

この記事でわかること

  • 接骨院の収入が「二階建て」である意味と、その影響
  • 院長が毎月見るべき4つの数字
  • 自費が伸びない院に共通する3つの原因
  • 単価・回転・再来のどれから手を付けるか
  • 人の問題(採用・定着)が集患と同じ構造である理由

1 結論:二階建ての構造から考える

結論

接骨院の収入は、保険の部分と自費の部分という二階建てです。そして保険の部分は、院の努力では単価を上げられません。

だから経営の打ち手は、次の3つに絞られます。

  1. 保険の部分は、件数と手間を管理する(伸ばすものではなく、崩さないもの)
  2. 自費の部分を、メニューと説明で積み上げる
  3. どちらにも効く再来率を上げる

多くの院が最初に「新患を増やそう」と考えます。ですが新患は、3つの中でいちばん費用がかかる打ち手です。広告費も、対応の手間もかかります。先に再来率と自費比率を整えていないと、集めた新患がそのまま漏れていきます。

順番の話は、業態を問わず共通しています。集患そのものの考え方は接骨院のマーケティングにまとめています。このページでは、その手前にある経営の数字の構造を扱います。

2 保険と自費は、別の商売です

同じ施術所の中で行っていても、この2つは性質がまったく違います。

  保険の部分 自費の部分
単価 院では決められない 院が決める
対象 外傷性の骨折・脱臼・打撲・捻挫など、法令で定められた範囲 制限なし(表現には規制あり)
来院頻度 高い。短期間に繰り返す 設計次第
事務の手間 大きい(請求業務) 小さい
伸ばせるか 伸ばせない 伸ばせる

保険の範囲について

柔道整復師の施術で療養費の対象になるのは、外傷性が明らかなものに限られます。日常的な肩こりや疲労回復を目的とした施術は対象外です。

範囲の解釈や運用は、保険者・地域・時期によって異なります。個別の判断は、必ず所轄の行政機関や保険者にご確認ください。このページは経営の構造を整理したもので、請求の可否を判断するものではありません。

ここから導かれる結論は単純です。売上を伸ばす余地は、自費の側にしかありません。保険の部分は「増やす」対象ではなく、「崩さない」対象です。

そして、もう一つ見落とされがちな点があります。保険の部分は、事務の手間という形でコストを発生させています。請求業務にかかる時間は、そのまま人件費です。件数が増えるほど手間も増えるため、件数が増えても手残りが増えるとは限りません。

3 院長が見る数字は4つだけ

経営の数字は無数にありますが、毎月の判断に使うのはこの4つで足ります。

  • 新患数

    その月に初めて来院した人の数。集患が効いているかを示します。

  • 再来率

    初回来院者のうち、2回目に来た人の割合。最も手残りに効きます。

  • 平均来院回数

    1人あたり、1か月に何回来ているか。回転と負荷を示します。

  • 自費比率

    売上に占める自費の割合。伸ばせる部分の大きさです。

この4つを、前月と前年同月の両方と比べます。前月だけだと季節の影響を読み違えます。

いま、この4つを出せますか

  • 新患数を、月ごとに記録している
  • 再来率を計算したことがある
  • 自費比率を、売上の内訳から出せる
  • 新患に「どこで知ったか」をたずねて記録している

4つ目ができている院は多くありません。ですが、これが無いと集患の判断が推測になります。

4 自費が伸びない3つの原因

自費メニューを用意しているのに伸びない院には、共通する原因があります。

原因1:メニューが「施術の名前」になっている

「骨盤矯正」「猫背矯正」のようなメニュー名は、院の側の言葉です。患者さんは自分の状態を、その名前で認識していません。

伝わるのは、いつ困っているかです。「朝、靴下を履くときにつらい方へ」「デスクワークで夕方に肩が上がらなくなる方へ」。同じ施術でも、入口の言葉が変わると反応が変わります。

この書き方は、接骨院の自費メニューの作り方で詳しく扱っています。広告規制の面でも、この書き方のほうが安全です。

原因2:説明するタイミングが会計時になっている

会計の場面で自費を勧められると、患者さんは「売り込まれた」と感じます。断りづらい状況で提案されているからです。

伝えるべきタイミングは、施術が終わって、本人が変化を口にした直後です。そこで「いまの状態を保つには、この間隔で続けるのが良いです」と伝えます。売り込みではなく、状態の説明として成立します。

原因3:保険の範囲で満足されている

これが最も根が深い原因です。保険の範囲で症状が落ち着けば、患者さんはそこで終わります。自費に進む理由が、患者さん側に無い状態です。

ここを変えるには、目的の置き換えが必要です。「痛みを取る」から「再発させない」へ。前者は保険の範囲で完結しますが、後者は完結しません。

表現には注意が必要です

「再発を防ぎます」「必ず良くなります」のような断定は、柔道整復師法の広告に関する規定や景品表示法の観点から問題になります。書けるのは事実です。誰が、何を、何分、いくらで、どういう流れで行うか。ここを具体的にするのが正しい方向です。

5 単価・回転・再来、どれが先か

売上は、この3つの掛け算で決まります。

単価1回あたりいくら
回転1日に何人診られるか
再来何回来てくれるか

手を付ける順番は、再来 → 単価 → 回転です。理由を説明します。

再来が先なのは、費用がかからないからです。既に来ている人にもう一度来てもらうほうが、新しい人を呼ぶより圧倒的に安く済みます。治療院のリピート率で具体的な手順を扱っています。

単価が次なのは、値上げではなくメニューの見せ方で動かせるからです。同じ内容でも、選択肢の並べ方で選ばれるものが変わります。

回転が最後なのは、上限があるからです。1日に診られる人数は、施術時間とスタッフ数で決まります。ここを無理に上げると、施術の質と再来率が落ちます。回転を上げる施策は、しばしば再来率を犠牲にします。

なお、回転にはキャンセルによる目減りがあります。当日キャンセルで空いた枠は、その日のうちに埋めない限り消えます。仮に1日20枠・月25日・キャンセル率5%なら、月25枠。自費6,000円換算で月15万円です。この計算と対策は空き枠のお知らせにまとめています。

6 競合密度が最も高い業態であるという前提

接骨院・整骨院は、治療院の中で最も店舗数が多く、最も商圏が狭い業態です。徒歩圏に複数の院があることは珍しくありません。

この前提は、経営判断に3つの影響を与えます。

影響 意味すること
比較される 患者さんは複数の院を見比べてから決める。選ばれる理由が必要
価格で戦えない 保険部分は同額。安さでは差がつかない
立地の差が出にくい どの院も徒歩圏。地図上での見え方が勝負になる

だからこの業態では、Googleマップ上での見え方が、そのまま経営に効きます。設定の具体的な手順は接骨院のGoogleビジネスプロフィール設定と治療院のMEOで扱っています。

7 人の問題も、構造は同じです

「応募が来ない」「辞めてしまう」。多くの院長が抱える悩みですが、これも集患と同じ構造で分解できます。

  • 見つかっていない

    求人票が届いていない。掲載媒体と書き方の問題

  • 選ばれていない

    見つかっているが、他院と比べて選ばれていない

  • 応募できていない

    応募したいが、応募フォームや連絡先で止まっている

そして求職者は、求人票を見たあと、ほぼ例外なく院名で検索します。そこでGoogleマップの口コミと返信、院内の写真を見ます。患者さんへの姿勢が、そのままスタッフへの姿勢として読まれます。

つまり、集患のために整えたものが、そのまま採用にも効きます。詳しくは接骨院の求人に応募が来ない理由で扱っています。

8 WEBは経営のどこに効くのか

WEBは万能ではありません。効く場所と効かない場所がはっきりしています。

経営の要素 WEBの効き方
新患数 直接効く。Googleマップと自院サイトが入口になる
自費比率 間接的に効く。来院前に料金と流れを理解してもらえる
再来率 部分的に効く。予約リマインドで無断キャンセルが減る
回転 ほぼ効かない。施術時間とスタッフ数の問題
採用 直接効く。求職者は応募前に院名を検索する

この表から分かるのは、WEBに投資する前に、再来率と自費の設計を先に整えたほうが効率が良いということです。新患だけ増やしても、受け皿が整っていなければ漏れます。

サイトを作る場合の費用の考え方はホームページ制作費用を、業者選びは集客支援の選び方をご覧ください。

9 何から着手するか

費用がかからない順に並べます。上から順に手を付けてください。

  • 新患に「どこで知ったか」をたずねて記録する

    費用0円。今日から始められます。1か月で、集患の判断材料が手に入ります

  • Googleの口コミに全件返信する

    費用0円。返信の書き方を先に決めてから始めます

  • 再来率を計算する

    費用0円。計算した瞬間に、いま何が起きているかが分かります

  • Googleビジネスプロフィールを整える

    費用0円。写真・営業時間・カテゴリ。表記の統一も併せて

  • 予約導線を直す

    既存サイトの修正で済む場合があります。予約システムの選び方

  • 自費メニューを組み直す

    費用は時間のみ。効果は最も大きい

  • サイトを作る・作り直す

    ここで初めて費用が発生します。上の6つを終えてからで遅くありません

順番を飛ばすとどうなるか

受け皿が整っていない状態でサイトや広告に投資すると、集めた人が漏れる仕組みに、お金を払って人を流し込むことになります。効果が出ないのは施策が悪いのではなく、順番が違うためです。

10 よくあるご質問

自費に移行すると、患者さんが離れませんか。

一部は離れます。ただし離れるのは、もともと保険の範囲で完結していた方です。目的が「再発させない」に変わった方は残ります。一度に全部を切り替えず、新規の方から新しい設計で受け入れるほうが、混乱が小さく済みます。

近隣に大手の整骨院ができました。価格で対抗すべきでしょうか。

保険部分は同額なので、価格での差別化は自費部分に限られます。そして価格を下げる競争は、回転を上げる必要を生み、再来率を落とします。比べられる場所(Googleマップの写真・口コミ・営業時間)を整えるほうが、費用対効果が高くなります。

数字の管理が苦手です。何から記録すればよいですか。

1つだけ選ぶなら、新患に「どこで知ったか」をたずねて記録することです。紙のノートで構いません。これがあるだけで、広告を出すかどうか、チラシを撒くかどうかの判断が推測でなくなります。

WEBに詳しい人が院内にいません。

最初の4つ(記録・口コミ返信・再来率の計算・GBPの整備)は、WEBの知識がなくてもできます。専門知識が要るのは、その後のサイト制作と広告運用からです。順番を守れば、外注する範囲も小さく済みます。

11 まとめ

  • 収入は二階建て。伸ばせるのは自費だけ

    保険部分は「増やす」のではなく「崩さない」対象です

  • 見る数字は4つ

    新患数・再来率・平均来院回数・自費比率。前月と前年同月の両方と比べます

  • 順番は、再来 → 単価 → 回転

    費用がかからない順です。回転を先に上げると、再来率が落ちます

  • 競合密度が最も高い業態

    比較される前提で、Googleマップ上の見え方を整えます

  • WEBは受け皿を整えてから

    漏れる仕組みに人を流し込んでも、費用だけが出ていきます

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の経営判断や療養費の請求可否を保証するものではありません。
※保険の適用範囲および広告表現に関する法令解釈は、所轄の行政機関・保険者等にご確認ください。
※記載の計算例は構造を説明するための仮定値であり、特定の院の実績ではありません。

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